今日の旅は、珍しくプール以外からはじまった。
この宿は、5階に庭園みたいな場所があり、ふらふらと散歩ができる。
バリ島は、良い感じの宿が、かなり安く泊まれるのも魅力だ。
現地のビジネスパートナーのお二人が迎えに来てくれた。
しかも車が格好いいジープ。
初めて乗った。
今日はマリンスポーツの日だ。
場所はヌサドゥアビーチ。
全盛期では、日本人もたくさん訪れていたらしい。
ただ、コロナ明けの今、日本人の影は見当たらない。
到着して着替え、すぐにパラセーリングの準備がはじまった。
船に乗せられて、海へ出ると
船乗りがいかつかった。
渋谷のナンパ箱クラブに出没しそうな風貌だが船乗りだ。
そこらのナンパボーイとは、戦いの歴史が違う。
そんな彼の手に導かれ、私たちはパラシュートに吊るされた。
離陸前。
離陸直後。ちなみに私は、ほぼ高所恐怖症だ。
ほぼ高所恐怖症の私は「なぜパラセーリングを選んだ」と30分前の自分に問いかける。
一周回って、楽しむことにしたら、なんとか行けた。
海が綺麗だ。だが私はほぼ恐怖症だ。
感動なのか恐怖なのか、複雑な心中に思考停止していると
いつの間にか陸についていた。
陽気なお姉さんが、こちらに手を振っている。
生還を祝福してくれてありがとう。
さて、次はバナナボートだ。
マリンスポーツのオンパレードである。
小舟からボートに移動し、準備が整う。
まあ、バナナボート、よく聞くレジャーだし、どんなもんだろうと侮っていると
首がへし折れそうだった。
波が来ては大きく跳ね、その度に首を責め立てる。
絶対、年間数人くらいは首痛めて帰ってるよこれ。
時々振り落とされる人もいるという。
常に振り落とされそうだった。
運動不足には、なかなかハードな挑戦だ。
ちなみにマリンスポーツの中には、ジェットスキーで島に行くというものがあった。
島にいたのは亀だ。
巨大な亀と触れ合える機会はそうそうない。
だが、なぜマリンスポーツの一環にこのレジャーが入るのかは謎だ。
亀に餌をやっていると
朝8時30分の山手線の光景が広がった。
亀の食糧争奪戦、他人を踏み越えても勝利を掴もうという戦国の魂がそこにはあった。
そんな亀の修羅を目撃していると
イグアナが悠々自適だった。
この島で、一人部屋を確保している彼は、競争など、どこ吹く風だ。
都会の弱肉強食、庶民の生活などものともしない官僚の風貌が場を制圧する。
フクロウも同じくだ。
亀の争奪戦など気にもせず、今日も強者は1人で平和な日々を送る。
こんなところで東京の縮図に遭遇するとは思ってもみなかった。
おまけに、裏世界の住人までいた。
彼らは常に、裏からこの世を牛耳っている。
帰り際、ひっそりとこちらを見送るインコ。
その目は何をみているのだろうか。
社会の縮図を目にした私は島を出る。
南国に来てまさかの上流階級と下流階級のそれを目撃するとは。
その後、最後の締めとして体験したのが
限りない過酷だった。
水中を歩くシーウォークである。
というか耳が痛い。
潜る前にガイドに「耳抜きは鼻を押さえて」と言われた。
しかし、ヘルメットで手が鼻に届くはずがない。
ガイドさんのあれはなんだったのだろうか。
こうして私たちのマリンスポーツは一通り終わりを迎えた。
夕日が落ちる中、私たちはディナーへ向かう。
しっかり夕日の中で記念撮影していると
まるでオーロラのような夕日が目の前に広がった。
これほどまでに綺麗な夕日をみたのは、人生で初めてかもしれない。
フィリピンのボラカイ島で似た夕日をみたことがある。
確か、マジックアワーと呼んでいた。
こうして夜がふけていく。
しばらくして、料理が運ばれてきた。
魚中心の現地料理の数々。
バリ島はご飯が美味いことも、1つの魅力だと思う。
しばらく南国の魚やエビを堪能していると
急にはじまる新進気鋭バンドおじーずのライブが始まる。
南国音楽業界の新たな扉を切り開く、新時代の始まりだ。
もっとも、演奏されていたのはkiroroだった。
こうして夜がふけていく。
ヌサドゥアビーチは、社会の縮図と海の冒険を堪能させてくれるビーチだった。
今度来る時は、新社会人と来て、社会の過酷さについて語ろうと思う。